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リレー寄稿

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【阪神・淡路大震災25年】鍵屋一(かぎや・はじめ)

2020年3月19日

【阪神・淡路大震災25年】鍵屋一(かぎや・はじめ)

跡見学園女子大学 教授
法政大学大学院・名古屋大学大学院兼任講師
一般社団法人 福祉防災コミュニティ協会代表理事

生年月日:1956年
出身地:秋田県男鹿市
最近の防災・減災活動:「誰一人取り残さない」防災の研究、実践活動。
内閣官房「人・コミュニティ・地域のレジリエンス向上のための研究会」座長。ほか内閣府、国土交通省・厚生労働省、経済産業省、自治体の防災関係委員会座長など。
著書に『図解よくわかる自治体の地域防災・危機管理のしくみ』『ひな型でつくる福祉防災計画』(編著)など。

1995年1月17日、その時あなたは何をしていましたか?

東京の板橋区役所職員として中小企業振興の担当でした。
阪神・淡路大震災が発生した後も、東京は関西と違って防災をしっかりやってるから大丈夫だろうと、正常化の偏見にどっぷりと浸かっていました。東京都の委員会で、中小の商店、工場の地震対策を考える場に出席した時、座長が「課題が大きすぎるなあ」と言ったので、ではどうすれば良いのかと自問自答したのを覚えています。


あなたの25年は神戸にどう影響されましたか?

2000年に板橋区防災課長になって、阪神・淡路大震災の教訓を生かして、地震に強い東京を作ろうという使命感が沸き上がりました。
記録、文献を読み込んだら、死因のほとんどは家の下敷きだとわかったのです。ところが、板橋区は備蓄と防災訓練中心の防災対策です。そのミスマッチに愕然としました。
耐震化こそ、地震防災の一丁目一番地!しかし、防災課は耐震化の担当ではありません。そこで、耐震化の担当に動いてもらおうと、当時の地方分権の熱気の中で、市民参画で防災基本条例を作ることにしました。
条例検討委員会の座長を、故廣井脩先生にお願いしました。廣井先生は、当時の中央防災会議委員。国の審議会の会長や委員を数多く務められ、板橋区のような自治体レベルには大物すぎる印象です。無鉄砲にも、市民参加で防災条例を制定したいのでぜひ会長をお願いします、という趣旨の簡単なメールを、ホームページのアドレスに送りました。なんと翌日には「防災の条例を市民参加で作成することは大変意義のあることだと思います。浅学非才の身ではありますが、お手伝いをさせていただきます」という返事が届いたのです。「神様からの手紙だ」!と思った瞬間でした。それから20年、毎日、防災を考え続けています。
多くの人とつながろうと考え、当時発足したばかりのNPO法人「東京いのちのポータルサイト」に耐震補強部会を作って、中林先生、目黒先生、福和先生、内閣府、国交省、工務店、メディア、それにまち場のみなさんと住宅耐震化の普及方策の研究、シンポジウム、日本耐震グランプリなどやってきました。それが、TEAM防災ジャパンにつながっています。


それを踏まえて現在どんな取り組みをしていますか?

2004年に板橋福祉事務所長になりました。日々が災害対応みたいな職場です。たくさんの職員に囲まれ、ライブ感、スピード感あふれる職場でした。
そこで気になったのは関連死です。阪神・淡路大震災では、900名あまりの関連死がクローズアップされました。今の基準なら、数倍に上っているかもしれません。せっかく助かった命が、避難生活の厳しさで亡くなっていく。福祉が災害救助法の対象でないこともあり、高齢者、障がい者、女性、乳幼児、外国人の避難生活を自治体はほとんど考えていませんでした。関連死は人災です!ただ、自分も、防災課の時は、耐震化と救助、医療、保健で命を助けますよ、あとは福祉さんに任せます、というスタンスでした。
ところが、福祉の現場では全く防災に取り組んでいません。その時、内閣府から「災害時要援護者の避難支援検討会」委員に声をかけていただきました。防災と福祉の連携がようやくできるぞ、という思いで議論に参加しました。ケアマネなど日常の支援者である福祉事業者が災害時にも支援の要となって住民とつながれば安全を確保できるはずだ、それを日常のケアプランやサービス等利用計画に書けばいい。また福祉支援のない人は、住民が当事者と話し合って避難場所、方法、支援者を決めて計画し文書化(個別計画)すればいい。実際は、長く曲がりくねった道が待っていて、15年過ぎた今でも防災と福祉の連携は十分ではありません。
幸いにも大学教員になって、縦割りを外れたので、仲間と一緒に福祉と防災、コミュニティの連携を進める(一社)福祉防災コミュニティ協会を設立し、研修やイベントを開催しています。消防防災科学センターの委託を受けて、この2年間で6県の福祉避難所研修を実施しました。災害時には、微力ながら仲間たちと支援活動も行います。
当面の目標は「みんな元気になる福祉避難所」。都道府県が企業版ふるさと納税を活用しながら、福祉避難所を開設・運営するために必要なマニュアル、重要資機材等を整備し、訓練することにより、災害時の要配慮者等の避難生活を支援し、災害関連死ゼロを目指すものです。関心のある方は、福祉防災コミュニティ協会のHPからご連絡をお願いします。