まなべる、いかせる、つながれる。防災・減災のオンライン基地。

運営:防災推進協議会 企画編集:助けあいジャパン 協力:内閣府防災担当

特集

「地区防災計画フォーラム2019」レポート

2019年3月29日

内閣府は、平成31年3月16日(土)に「地区防災計画フォーラム2019~地区防への道はひとつではない~」を、大阪市にて開催しました。

昨年は、大阪府北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震など、多くの災害が発生しましたが、住民が日頃から地域の中で周辺のリスクや避難について話し合い、地区防災計画を作成していたことで、発災時に的確な避難ができ、多くの命が救われたという事例がありました。

地区防災計画制度が開始された平成26年から5年が経過し、計画の策定プロセス、取組課題、地元自治体との関係等には、地域ごとに様々な方法があることが分かってきました。

そのため、本フォーラムでは、様々な地域における策定にあたっての苦労や工夫等の「取組み方」の事例の共有が行われ、計画策定支援のための自治体職員のネットワークである「地区防‘z」の発足も発表されました。


<開会挨拶>

開会に先立ち、山本順三内閣府特命担当大臣(防災)と、竹内廣行大阪府副知事、田中清剛大阪市副市長よりご挨拶がなされました。その後、内閣府、大阪府、大阪市の講演があり、続いてパネルディスカッションが行われました。今回はパネルディスカッションの内容を中心にご紹介します。


<パネルディスカッション~第1部~「被災地における地区防災計画の経緯」>

モデレータ:加藤孝明 東京大学生産技術研究所准教授
パネリスト:増田裕子 大阪市淀川区新東三国地域活動協議会副会長
         原孝吏 倉敷市建設局長
      窪田亀一 大洲市三善地区自治会長

本セッションでは、初めに、愛媛県大洲市三善地区と大阪市淀川区新東三国地域のパネリストから、地区防災計画への取組状況と、実際の災害時における対応状況について報告がなされました。

愛媛県三善地区の窪田氏からは、過去の水害経験から、地域で水害への意識はあったこと、地域の自主防災会が中心となって防災計画を策定しており、その計画をもとに地区防災計画の策定に取組んだことが伝えられました。その結果、平成30年7月の豪雨災害時には、行政から得られる情報をもとに、地域住民が適切な避難行動をとることができたことが報告されました。

大阪市淀川区の増田氏からは、小学校区単位の地域活動協議会において地区防災計画を策定し、大阪北部地震の際には迅速なマンション内の安否確認ができたこと、また平常時から避難所開設のために「避難所開設キット」を準備して、地域内の誰であっても避難所を開設できる取組をしていることが紹介されました。

両地区の報告を踏まえ、加藤准教授から、地区防災計画策定の際の議論に「魂」が入っていたので実効性があるものとなったこと、担い手を増やしていくことが特に大都市で課題であること、課題があることが解決のための取組につながるという意味で地区防災計画は「成長」するものという見解が示されました。

次に、行政の立場から、倉敷市の原氏は、平成30年7月豪雨災害時にGISを活用して多数の地図情報を出したこと、こうした準備は事前にしておくべきことが報告され、今後、復興計画の取組と合わせて、住民と連携した計画づくりを進めていく決意が話されました。

これらの発表を踏まえ、加藤准教授から、GISの活用の可能性、リスクを正しく認識することの必要性、地区防災計画の策定プロセスそのものに価値があること、行政と市民がフラットな関係で建設的な議論をしていくことの重要性、最後に、地域防災の取組が地域の文化として自然に根付く状況を目指すことの必要性が示されました。


<パネルディスカッション~第2部~「住民以外の主体が関わる地区防災計画」>

モデレータ:鍵屋 一 跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授
パネリスト:上野慎也 株式会社シミズ・ビルライフケアマネジメント事業部門北海道営業所課長
      橋本茂 日本防災士会参与(日本防災士機構事務総長)
      宮田愛子・山口和人 UR都市機構東日本賃貸住宅本部

本セッションでは、初めに、パネリストから地区防災計画に取組む地域の特徴と、現在の取組状況について報告を受けました。

株式会社シミズ・ビルライフケアビルマネジメントの上野氏からは、1,600人が就業・収容されているビルの地区防災計画を検討するにあたり、参加者を増やすためにテナントへの連絡先を事業主でなく防火管理者にして効果があったことが紹介されました。ビルや企業は平日の昼間の災害時に備え、地区は夜間休日の災害に対応するという「車輪の両輪」の関係により防災力を確保することで、全体が強くなるという考え方が提起されました。

UR都市機構の宮田氏、山口氏からは、それぞれ高齢化が進展している団地において防災に取組んでいくために、市町村やアドバイザーの方と協力しながら、団地の危険・資源マップなどの作成を行っていることや、参加者を呼び込むための「イベント」としての開催工夫が紹介されました。

日本防災士会の橋本氏からは、地区防災計画の策定にあたって「専門的なイメージによるハードルの高さ」「市町村に受け付けられなかった場合の不安」「策定方法がわからない」という壁があることが紹介され、必要なことは、自分たちの安全を守る方法を検討するというプロセスであるという考えが提起されました。

これらの発表を受けて、モデレータの鍵屋教授から、「愛と勇気とSome Money」が必要という提言がありました。住民以外からの支援(愛)とともに、住民の「受援力」(勇気)が必要であること、そして行政や事業所からの活動資金の支援が必要であることが示されました。

最後に、株式会社シミズ・ビルライフケアビルマネジメントの上野氏は「世界中のビルで地区防災計画を作る場合、そのお手伝いをすること」、日本防災士会の橋本氏は「地区防災計画を作るすべての地域を手伝うこと」、UR都市機構の宮田・山口氏は「URの全国の団地で地区防災計画をつくること」を、鍵屋先生とそれぞれ約束しました。


<パネルディスカッション~全体議論・まとめ~>

登壇者:加藤孝明 東京大学生産技術研究所准教授
    鍵屋一 跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授
    佐谷説子 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(普及啓発・連携担当)

まず、第二部のモデレータである鍵屋教授から、地区防災計画の策定には、「熱意」が必要であり、熱意がない場所の動かし方は研究者や行政も考えていくが、まずは少しでも熱意のあるところを動かしていくことがよいという考えが示されました。学びの姿勢は必要であるものの、一生懸命取り組めば、必ず安否確認や避難支援、避難所運営にたどりつくので、ガイドラインにこだわる必要はないとの考えも示されました。

次に、第一部のモデレータである加藤准教授から、「熱意」に火をつけるきっかけとしての地区防災計画という考え方が示され、熱意がないところは、市町村からの情報提供で刺激を与え、潜在的な熱意を表に出す必要があるとされました。また、経験や課題(悩み)、工夫について共有することが重要であるが、地域の特性は多様であることから、標準的なガイドライン等の模範解答を普及することではなく、実施プロセスや検討項目といった最低限の内容を伝えることが望ましく、各地域で住民がそれぞれの正解にたどりつくことが地域の豊かさの広がりにつながるとされました。

内閣府の佐谷参事官からは、地区防災計画制度の意図が未だ十分に伝わっておらず、行政職員のスキル向上が必要との考えが示された。そして、地区防災計画に関わる自治体職員のスキル向上につながるよう、自治体ネットワーク「地区防‘z」を立上げ、各地区の知見や経験を共有していく考えが示されました。
「地区防‘z」には243人が登録しているところ、そのうち会場に来場していたメンバーが登壇して意気込みを語り、本フォーラムは終了しました。

パネル①

東京大学 准教授 加藤孝明(左)
跡見学園女子大学 教授 鍵屋一(中央)
内閣府政策統括官(防災担当)付参事官 佐谷説子(右)

地区防'z

「地区防‘z」メンバー


最後に、本フォーラムの結果、地区防災計画への取組の必要性を感じたことが8割以上というアンケートの結果をご紹介いたします。

地区防アンケート結果

アンケートでは、「多様な主体による地区防災計画の話、鍵屋先生の話、とてもためになりました。熱がないところへの取組が課題だが、地区の特性ポテンシャルをみつけて、引き出していきたいと思います」、「平日の昼間は仕事として防災にとりくんでいたが、平日の夜や休日にも地域住民としてとりくみたいと思いました」といった声も寄せられました。全体として、本フォーラムを通じ、地区防災計画への意識が大いに高まったことが伺えます。

  • 関連タグ:

バックナンバー