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リレー寄稿

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【東日本大震災10年】中川和之(なかがわ・かずゆき)

2021年3月11日

【東日本大震災10年】中川和之(なかがわ・かずゆき)

時事通信社解説委員

出身地や活動地域:岐阜県大垣市生まれ、兵庫県芦屋市育ち、横浜市在住、東日本大震災後に山形支局勤務で東北にも縁
最近の防災・減災活動:災害を経験した市町村長のインタビューを行って、災害経験のない首長に「覚悟」を求める消防庁編集の事例集作成のお手伝いをしている。
https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/senmon/cat2/cat3/post-1483.html

あなたにとって、東日本大震災とはなんですか?

「ありえない」とは言えないはずの地震と津波だったのに、備えの不十分さを社会に伝えられていなかった自分の至らなさに打ちのめされました。原子炉本体以外の脆弱性が、2007年の新潟県中越沖地震で明らかになったのに、電源という基本的なことが見過ごされていたことに気づかず、運転停止さえさえすれば大丈夫と思い込んでいた自らの無知にも気づかされました。
その中で、仲間とすぐに動き出したことで、災害ボランティアのネットワークが創り出され、阪神大震災からの15年の蓄積を多少は生かすことができたことや、少し関わっていた防災教育によって、失われていたかもしれない命が助かったこともわかり、これからに希望を持つこともできました。ただ、まだ、そこからそんなには前に進めていません。


社会にとって、東日本大震災はどういう課題を残し、それはどれだけ解決したと思いますか?

「想定外」とされたハザード想定は、風水害も含めて、誰もが「ありえないことが起きた」とは言えなくなるぐらいには進んでいますが、具体的な備えはまだ緒に就いたところです。対策を進めないと、どのようなことになるか、社会的に不都合な想定現実の共有は、あまり進んでいません。特に、ありえないゼロリスクを前提した無責任な言説が、依然として減っていないのは残念です。
個人的には、ずっと追いかけてきた災害救助法の運用など、過去の災害経験から改善されてきた様々な社会制度が、なぜ東日本で十分に使えなかったのかは、まだ課題すら未整理だと考えています。


残された課題の解決のために、社会には何が求められるとお考えですか。そのために、あなたはこれから何をされていきますか。

ものごとを忘れやすく、日常生活の課題に拘泥しがちな人間の作る社会で、生活と異なる時間軸で繰り返す自然災害に備えることはそもそも困難なことです。それを前提に、建築基準法や都市計画法上の既存不適格をなくすなど、自然に対して謙虚でいつつ、地域で暮らす方々の尊厳を大切にしながら、危ない建物や場所を物理的に減らしていくこと。私権制限などを伴う困難な課題も含まれますが、豊かな海と大地の恵みを得られる日本列島で、それなりに幸せに暮らすために必要な痛みであるという覚悟を持って、同じ志を持つ仲間とのつながりを大事にしながら、時間をかけて取り組んで解決していくしかないでしょう。時間はかかりますが、避けなければならない事態を極力避けるためには、それが最短の方法だと考えています。