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リレー寄稿

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【東日本大震災10年】浅野幸子(あさの・さちこ)

2021年5月19日

【東日本大震災10年】浅野幸子(あさの・さちこ)

減災と男女共同参画 研修推進センター 共同代表
早稲田大学地域社会と危機管理研究所 招聘研究員

出身地や活動地域:浅草(東京都)
最近の防災・減災活動:地域防災領域全般の活性化、ジェンダー・多様性の視点に立った防災力の強化。
内閣府の「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」検討会の座長、「避難所運営ガイドライン」委員のほか、内閣府、経済産業省、自治体の防災関係の委員などをつとめる。
著書に、『あなた自身と家族、本当に守れますか? 女性×男性の視点で総合防災力アップ』(日本防火協会)ほか。

あなたにとって、東日本大震災とはなんですか?

2004年から男女共同参画の視点による防災啓発にも徐々に取り組んでいましたが、2005年、中央防災会議に設けられた「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する専門調査会」の委員となり(当時所属していた、地域婦人会の全国組織“全地婦連”の職員として参加)、翌年、女性対象の防災研修の事業を立ち上げ実践しているところに、東日本大震災が起こりました。
女性・少女たちの置かれた状況が気遣われる中で東日本大震災女性支援ネットワークの設立に参画。このネットワークの研修チームが、現在私が共同代表を務める“減災と男女共同参画 研修推進センター”の源流です。
振り返ると、こうした取り組みは、被災地の女性の皆さんたちの、同じことを繰り返さないで欲しい、現状を変えなければいけない、という思いに突き動かされてきたところが大きいようにも感じます。


社会にとって、東日本大震災はどういう課題を残し、それはどれだけ解決したと思いますか?

男女共同参画の視点から特に問題となったのは、避難所の劣悪な環境です。プライバシー、防犯、育児・介護などの配慮がされない、避難所運営の意思決定は男性中心で、女性は炊き出しといった形で固定的な性別役割が見られ、結果として、環境・衛生・物資などの面の改善が遅れる傾向にありました。在宅避難も大変です。
また、不自由な避難生活で子どもや高齢者の世話をしながら、家を片付けたり各種の手続きをしたりすることは容易ではありませんが、子どもや高齢者の一時預かり支援などがあれば、どれだけ助かったでしょう。仮設住宅も、不便な場所に建てられると、買い物や保育・医療・福祉サービスの利用が難しくなるため、やはり女性たちは厳しい状況に置かれます。
こうした問題は、特に女性に大きな負担を強いますが、父子家庭のお父さんや、男性で家族の介護を担っているかたも、同様の状況に追い込まれます。そして、こうした問題を改善しなければ、ケアを受けている子ども・高齢者・障害者の方たちが追い込まれることにもなるのです。それだけに、災害時により厳しい状況に置かれる多数派の女性たちの声をしっかり防災対策・被災者支援策・復興政策に活かすことが重要です。
また、東北では大幅な人口減少、学校の統廃合・児童の減少、家族の分離、生活困窮、生活インフラの不足、DV・性暴力、若年男女の問題(虐待・引きこもり・居場所がない・性被害など)、高齢者の孤立などの問題が起きていますが、男女共同参画の視点を欠いた状態で被災者支援、復興まちづくりを進めても、こうした問題を解決することは難しいでしょう。


残された課題の解決のために、社会には何が求められるとお考えですか。そのために、あなたはこれから何をされていきますか。

昔から、地域婦人会や女性防火クラブなど、防災に積極的に取り組む女性たちが全国にいましたが、地域組織離れが進む中で、高齢化や会員減少といった傾向があることは否めません。一方で、東日本大震災から10年を経て、さまざまなタイプの女性の防災リーダー、復興の担い手も登場しており、本当に頼もしい気持ちでいっぱいです。また、男女共同参画の視点の重要性に気づき、正面から取り組む男性の専門家や自治体職員、防災リーダーも増えています。こうした方々と協働させていただきながら、地域防災の活性化支援のあり方や、政策のあり方について、さらに発展的な議論と実践につなげていければと思います。