まなべる、いかせる、つながれる。防災・減災のオンライン基地。

運営:防災推進協議会 企画編集:助けあいジャパン 協力:内閣府防災担当

リレー寄稿

中久木康一(なかくき・こういち)

東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 顎顔面外科学分野 助教
神奈川歯科大学 災害医療歯科学講座 特任准教授
女川歯科保健チーム 事務局
女川歯科保健チーム http://eagerdental.jimdo.com/

生年月日:1972年3月17日
出身地:千葉県船橋市
最近の防災・減災活動:
・講演 歯科関係では、あちこちでお世話になっています。川崎市宮前区や宮崎市などで、市民公開講座もさせていただきました。
・著書 歯科における災害対策(砂書房、2011年)、歯科医院の災害対策ガイドブック(医歯薬出版、2013年)、災害時の歯科保健医療対策(一世出版、2015年印刷中)
・イベント 主に歯科関係者をお誘いして、災害時の歯科保健医療に関する研修会や、現地に赴いての実地研修会を行ったりしています。最近は、「被災×社会的弱者」というシリーズでの研修会をはじめました。

・地域防災にはまったきっかけは?

もともと、新宿の野宿者などの生活環境の悪い方々に対する対応をしており、新潟県中越地震が起きた時に、一緒に活動していた看護師が同地方の出身で、「住むところを失った方々が多くいるみたいだから行こう!」と出向いたのがきっかけです。コミュニティセンター、体育館、校庭、教室、と多岐に渡る場所を束ねた避難所において24時間対応の保健室を設置し、普段からの活動とほぼ同じく、健康センターなどと協働しての健康管理のお手伝いをしました。東日本大震災後も、自治体と協働しての地域の健康管理という観点から関わっています。
参考資料:
http://www.dental-tribune.com/articles/news/japan/12480_1_.html


・地域防災に関わって、改めて大切だと感じたことは?

「想定外を想定しておくこと」かな、と思います。本業では口腔外科手術を担当していますが、予定通り行かない場合を予想し、その際にはどういう方法で修正するかという「転んだ先の杖」を準備し、手術には、その説明までもして納得していただいた上で望んでいます。無論、このままいけば確実に転落する病気の方に対しては、転んだ先に杖はなくても強行せざるを得ないこともありますが、地域防災はそうではありません。レースの準備のように、全ての失敗を想定し、その際にどうリカバリーするかというシミュレーションをして、そのイメージトレーニングをしてからスタートに立てば、すべてが想定内となります。
参考資料:
http://www.chiba.med.or.jp/general/iryonet/article/people/20120201/01/02.html


・地域防災・減災に取り組んでみて感じる今の社会課題は?

「想定外に対する恐怖」かな、と思います。あまりに守られた環境に成育すると、そこから外れることが怖くて仕方がないようです。子どもは誰でも、何にでも興味を持って、出て行ったり触って口にしてみたりしますが、いつからか、あまりに環境のよい縄張りの中で生活することに慣れてしまうと、外への興味や理解がなくなり、協調性がなくなって排他的になるようです。人生は全て想定外であり、その連続は苦しかったりするものの、全てに興味をもって取り組んでクリアして行くことが醍醐味だと思いますが、そのような興味がない、自分だけの殻に閉じこもっていないと不安になってしまう人が多くなってきているような気がします。


・TEAM防災ジャパンの一員に推薦!という方をご紹介ください。

何人もが浮かんできて、最も困った質問でした。
まず、管理栄養士の笠岡(坪山)宜代さん。
2013年に立ち上がった第1回災害食学会は、久しぶりにわくわくした学会でした。「災害なのだから、この程度の食事でも仕方ないだろう」、と僕自身は感じてしまっていましたが、この学会には「災害時であろうとも、あたたかくておいしいものを提供したい」「おいしくて栄養のあるものを落ち着いた環境で食べるのでなければ食事とは呼ばない」という熱い思いの人たちが集まっていて、すごく刺激を受け、心を洗っていただきました。笠岡さんはその課題に取り組む一人ですが、その後も研修会などでご一緒させていただいています。

次は、看護師の原田奈穂子さん。
この数年、3月11日が近くなると、「震災を忘れてはいけない」という言葉とともに多くの映像が流され、数年前の想いや臭いを思い出し、自分が忘れてしまってきていることに罪悪感を覚えます。そんなタイミングで、「嫌なことは忘れていてもいいのよ」というメッセージを流してくれたりして、なんだかほっとさせてくれる、心の看護師さんです。

そして、日本トイレ研究所の加藤篤さん。
目立たないけれども、被災後すぐに必要となるもので、健康管理にも大きく影響するのが、トイレです。清潔な水と、衛生的なトイレは、公衆衛生の基本となるでしょうが、様々な研修会とともに、実際に被災した地域の学校などでの経験から行動に移すワークショップなど、活発に活動されています。歯科保健も、目立たない健康管理のひとつで、何よりも環境が大切です。「避難所に歯みがきのできる洗面所を!」を訴えたいという立場からも、とても刺激になっています。


・TEAM防災ジャパンへの想い、メッセージをお願いいたします。

医療においては、その役割から、災害後の迅速な対応に主眼がおかれてきました。しかし、東日本大震災の経験を経て、災害後の対応がいくら良くなっても、被災を減らさないことには対応しきれないことがよくわかり、今は、「どのようにして被災時に健康被害を減らすか」という観点での「健康における防災」に、国も強く取り組んでいます。振りかえってみると、国土交通省や消防庁では耐震化や防火の建築物を増やしたり、気象庁では緊急地震速報の整備をしたりなど、国全体では防災に向かっていたわけですが、健康被害に関しては少し後手にまわっていた感じもあります。これから、他分野の皆様にもぜひお知恵をいただきながら、健康の分野でも防災がどんどん育って行くこと、そして、高齢化の先進国?として、その経験が世界に共有されることを願っています。