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【関東大震災100年】山中茂樹(やまなかしげき)

関西学院大学災害復興制度研究所 顧問・指定研究員

主な活動地域
兵庫県 西宮市
最近の防災・減災活動

関東大震災から100年経ちましたが、教訓として伝わっていると考えられることはなんですか?

福祉国家論の草分けで、厚生経済学者の福田徳三が唱えた「人間の復興」を制度化することの重要性と、ボランティア界のレジェンド、キリスト者の賀川豊彦が始めたセツルメント運動を受け継ぐことの必要性を教訓としたい。人間復興論とは、街路の再建より、まず被災者の命と暮らしを守るべきだとの考え方だ。そのためには生活本拠権たる住まいを保証し、人々が生きていくための労働権や営業権を回復せよと訴える。セツルメント運動は、支援者の被災地への移住・転居による寄り添い支援を求める考え方だ。賀川の思想は、新潟県中越地震の地域復興支援員として蘇り、東日本大震災で定着した、といえるだろう。

いま、関東大震災級の地震が起きたら、心配なこと、解決していないと思う課題はなんですか?

被災者生活再建支援基金の破綻と膨大な広域避難者を支援するための制度がないことだろう。被災者生活再建支援基金は東日本大震災でも破綻し、国のてこ入れにより、かろうじて維持された。かつて兵庫県が提唱し、市町村の反対で全国化が頓挫した住宅再建共済制度を洗い直し、新たな複数の支援制度を再検討すべきときだろう。また、長期広域避難者の疎開状況を把握するためにマイナンバーカードを使った避難先把握システムを構築するとともに、避難先での準市民制度や二重住民票などの導入なども考慮すべきだ。

関東大震災からの100年に学び、子孫たちに何をどう伝えていくか、考えていることをお聞かせ下さい。

福田徳三が「真の復興者は罹災者自らを措いて外にない」と主張したように、被災しても国家や行政に頼る「不本意惰民」(福田)となることなく、被災者こそが復興の道筋を決める自立した市民となること。そのためには合意形成の作法や災害に対するリテラシーを高め、自分の考えを主張できない人たちに伴走できる懐の深さ、優しさを持つよう日頃から心がける子どもたちを育てることが重要だ。
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