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「防災推進国民大会2017(ぼうさいこくたい)クロージングセッション」レポート
2017年11月26日、27日に宮城県仙台市の仙台国際センターにて開催された「防災推進国民大会2017(ぼうさいこくたい)」(以下、「ぼうさいこくたい」という。)の振り返りと今後の展望について、27日のクロージングセッションにて議論が交わされた。
ぼうさいこくたいクロージングセッション
日時:11月27日(月)14:30~16:00
防災推進国民大会2017の振り返りと今後の展望
■モデレーター
林 春男(国立研究法人 防災科学技術研究所 理事長)
■パネリスト
山澤 將人(日本赤十字社 救護・福祉部長)
栗田 暢之(レスキューストックヤード代表理事)
鈴木 毅((一社)日本損害保険協会 常務理事)
加藤 孝明(東京大学生産技術研究所 都市基盤安全工学国際研究センター 准教授)
1.防災推進国民大会2017のふりかえり
山澤 將人氏(日本赤十字社 救護・福祉部長)
<4つの視点によるふりかえり>
1.連携、各々のもつ力を結集し、一般の市民のために有効的に使えるか、また他のDMATなどとの連携などが課題と考える。
2.世界会議との連携 2030年の7つのグローバルターゲットを実践するために、事前防
災の強化、Build back Betterに取り組む4つの柱をたてており、官民連携・多様性などの観点が外せないと考えている。
3.セッションの多様性に、各専門性の特徴がありよかった。また一方、一般市民による主体的な参加が求められ、そのまなび体験の場があったことがよかった。
4. 救助、応急活動、本格的な復興支援に取り組んできたが、今年度より本格的に防災の取
り組みを始めたが、今後は多様な団体との連携等が必須のため、これまでの人材育成だ
けでなく、ファシリテイト、コーディネイトできる人材育成が大事だと気付かされた。
栗田 暢之氏(レスキューストックヤード代表理事)
<地域における連携 防災について学ぶ>
1995年のボランティア元年から23年。市民セクターが「ぼうさいこくたい」に参加できる時代になった。2004年がターニングポイント(台風が10上陸、中越地震の発災)で災害ボランティアセンターの設立が普通となったものの東日本大震災では、多様なボランティアの参加に対し、被災地でのマッチング態勢、連携が出来なかった。その後、全国災害ボランティア支援団体ネットワークJVOAD設立、地元の連携団体KVOAD設立となった。次の巨大災害に向けては、ふだんからの連携がテーマ。民間連携、行政セクター、企業セクターなど、また日赤ボランティア(130万人)との平常時からの連携を模索し、一丸となって取り組める環境を作っていきたい。
鈴木 毅氏((一社)日本損害保険協会 常務理事)
<防災について学ぶ 誰もが参加する防災>
損保協会は1917年に設立、今年100周年。この100年を振り返ると、自然災害が多く、巨大地震、大きな台風被害があるたびに業界全体で対応することが必要である。
現在、防災教育に力を入れており、ぼうさい体験授業は、小学生が動くこと、大人の対応が変わり、そこから地域が変わるというサイクルにより防災力の強化が必要である。
加藤 孝明氏(東京大学生産技術研究所 都市基盤安全工学国際研究センター 准教授)
<連携の強化、誰もが参加する防災>
地域を強くするために誰でもどこでも策定できる地区防災計画が有効である。内閣府が44モデル地区を作り、これまでにない新しい計画がどんどん生まれている。マンション単位や企業との連携や、観光協会などが地区防災計画を考えることになろう。
2.今後に向けて
林 春男氏(国立研究法人 防災科学技術研究所 理事長)
ぼうさい体験授業、ぼうさい甲子園、防災教育チャレンジプランの3つの試みが阪神・淡路大震災の教訓からうまれたものが今も続いている。文科省が初等中等部に所管が移り、指導要領の改訂の中で、色々な科目の中で防災を扱おうという事になっている。
栗田 暢之氏(レスキューストックヤード代表理事)
支援のムラ、落ちをなくそうという事が目標となろう。災害が起きる前から、市民セクター、社協、企業、行政との連携の議論を深めているところ。復興期における連携も課題と考えている。
山澤 將人氏(日本赤十字社 救護・福祉部長)
主体は医療、救護活動。災害医療の現場では、迅速な対応が求められる。指揮統制は、各々の独自の考えに基づく事もあり、現在「調整」を重視し、DMAT、医師会、日赤が災害医療コーディネーターの育成に力を入れていれ、それぞれの団体がいかに連携活動できるかを模索している。
鈴木 毅氏((一社)日本損害保険協会 常務理事)
情報発信の連携は、特に地震保険の加入状況地域において非常に差がある。それぞれの得意分野と得意のチャネルがある。連携により相乗効果が出すべきだと考えている。
加藤 孝明(東京大学生産技術研究所 都市基盤安全工学国際研究センター 准教授)
昨年のぼうさいこくたいと比べ、盛況だった。学術の世界では「たこつぼ化」が進んでいるように思われる。隙間を小さくし、両手を広げ重なる部分を作っていくことが大事だと考えている。ジェンダー問題で一歩外に踏み出して連携することで気づきがたくさんあった。また国際水準に照合し客観視することが重要で、これはまさにジェンダー問題で気づかされたこと。
3.閉会にあたり
伊藤 敬幹 副市長(仙台市)
東日本大震災を被災地として経験した仙台市にとって、6年8カ月間経過する中で、どのようなまちづくりをしていくかという視点におき、防災を枠組みに入れて考えてきた。その際にあらゆる主体の連携が欠かせないという認識で取り組んできていたので、この大会の成果をあらゆる主体の緊密な連携の重要性の確認をされ、「仙台ぼうさいこくたい憲章」としてとりまとめられ、今後の共通認識になることが地元市としてありがたい。
この2日間に大人から子供まで幅広い世代・立場の方と、この場を共有できたことは、マルチステークホルダーの参画による防災減災を目指す「仙台防災枠組2015-2030」の推進に大きく役立ったと感じる。同時に大地震の経験や教訓、よりよい復興の推進力となった地域の活動を世界発信していく責務もおっている。今後も定期的に「世界防災フォーラム」を開催するなど、合わせて継続発信することで、防災環境都市として邁進したい。
佐谷 説子氏 (内閣府. 政策統括官(防災担当)付参事官(普及啓発・連携担当))
ぼうさいこくたいは国民運動である。これを盛り上げていくことにより、防災の主流化を狙っている。「防災」に関して考えるのは、この2日間だけでなく、日々、防災の視点を取り入れることで自然と「防災」が身についていくことを目指している。
日々の防災活動を盛り上げていくために大事なのは、コンテンツである。それを積み上げ、深耕することで、次のぼうさいこくたいに持ち寄っていただきたいと考えている。日本は防災先進国であるため、世界水準に照らし合わせ、客観視することでさらなる進化をしていただきたい。
また、「ぼうさいこくたい~防災推進国民大会2017~」の総括としての位置づけにて、防災に取り組む主体が将来の大規模災害に備えて連携するための指針として、「仙台ぼうさいこくたい憲章~仙台防災枠組2015-2030の実施に向けて~」が提案された。