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特集

レクチャー「津波防災の日を迎えるにあたって」

2018年10月29日

11月5日は「津波防災の日」です。この日は、1854年の安政南海地震による津波が和歌山県を襲った際の、「稲むらの火」の逸話にちなみ、全国各地で津波防災に関するイベントが開催されます。
今年は、平成30年度「津波防災の日」スペシャルイベント「最新科学×津波×地域防災」が川崎フロンティアビル2階KCCIホールにて開催されます。
開催に先立ち、津波防災について加藤孝明先生(東京大学生産技術研究所・都市基盤安全工学国際研究センター准教授)にインタビューを実施するとともに、共催者である川崎市総務企画局危機管理室の永山室長様に本イベントに対する抱負を語っていただきました。


<加藤孝明先生のプロフィール>

経歴:
東京大学工学部都市工学科卒業。同大学院工学系研究科修士課程修了。工学(博士)。東京大学工学部総合試験所助手、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻助手、助教を経て2010年4月より現職。

加藤先生


――津波の脅威に対して、地域はどのように接していけば良いのでしょう?

なによりも、津波の脅威を正しく知ることが重要です。
自然災害には、さまざまな不確実性が含まれます。津波の被害想定にしても、震源域や断層の滑り量、津波の波形などは、あくまでも行政が仮に設定したものがベースになっています。また、海底地形によっては津波の再現精度が落ちざるを得ないケースもあります。こうしたことから実際に発生する災害には“ゆらぎ”が生じることを理解することが重要です。ハザードマップに示されたものとは異なった被害が発生するかもしれません。
また、予想される津波被害を示すには浸水深を示すケースが多いと思いますが、災害時に自分がどう行動するかを考えてみると「津波がいつ来るのか」が重要な情報となります。深さだけでなく津波が訪れる“時間”についても知っておくことが大事です。
加えて、リアリティをもって理解することも必要です。例えば伊豆市などではGoogleのストリートビュー上で想定される津波被害の状況を目で見てわかるようにしています。津波が来襲した時のまちの情景、いわば災害の状況像をイメージできるようしていくことが重要でしょう。
こうした認識が各地域で浸透することで、津波の脅威への正しい理解が進んでいきます。また、個人が各々「自分たちはこれぐらいのリスクを抱えている」ということを自主的、主観的にイメージしていくこともスタートポイントの一つとなるでしょう。

ストリートビュー


――こちらに川崎市の津波ハザードマップがあります。これからどのような取組を加速化させることが重要でしょうか?

川崎市の津波被害の想定エリアには、高齢化が進んでいる地域が多く含まれ、これまでも地震防災に対して熱心に取り組まれてきたと思います。こうした過去からの蓄積を生かし横展開させるような形で、津波にも取り組んでいく流れをつくることが有効でしょう。
また津波に対して被害を軽減するには、高いところへと逃げることが重要となります。戸建て住宅などが広がるなかに、マンションや企業のビルが点在するような市街地では、防災がコミュニティ再構築のきっかけを生むことも期待されます。避難場所の確保や訓練などを通して、古くからの住民と比較的最近住むようになった住民、企業などが、自然に顔を合わせコミュニケーションする機会が増えるようです。
さて、これは全国的な傾向となりますが、臨海部のコンビナートなどといった大規模な事業所では近年火災の発生件数が少しずつ増加しています。その背景としてプラントやインフラの老朽化を指摘する声も見られるようです。川崎臨海部においても、高度成長期やそれ以前に整備された施設・設備が数多く残っています。今後、産業として街として、どのように質的な転換を図り津波などの災害への対応力を高めていくか。未来志向の投資が出来るのかが問われるのではないでしょうか。


――11月5日の「津波防災の日」スペシャルイベントに向けて、一言。

全国各地で津波防災に向けた様々な取組が進みつつあります。本イベントも“経験と工夫の共有”の場となるはずです。


本イベントの共催者である川崎市総務企画局危機管理室の永山室長様からも、コメントを寄せていただきました。

――「津波防災の日」スペシャルイベントの開催に向けての抱負を一言。

「防災から始まる、力強いまち」を合言葉に、防災対策に取り組んでいる本市において、このようなイベントを開催いただけることは、大変有り難く、関係の皆様には深く感謝申し上げます。
川崎臨海部は、石油コンビナート地区であり、危険物や高圧ガスを多量に扱う事業所が多いことから、特別防災区域に指定され、事業所・国・神奈川県・本市が連携して、総合的な防災対策を推進しております。津波対策としては、津波避難施設の指定・津波避難訓練などのソフト対策と海岸保全施設の整備・岸壁や橋梁の耐震化などのハード対策を組み合わせ、津波被害による「死者数ゼロ」を目標に取り組んでおりますが、今年度は、内閣府のご支援をいただき、特に、臨海部の島部における津波防災対策への取組を進めております。
特別セミナーにおきまして、この取組の現状について報告させていただきますが、本市の前に発表される全国の津波に関する地区防災計画の取組事例につきましては、本市といたしましても、今後の取組の参考にさせていただきたいと考えております。
また、京都大学の矢守先生、本市臨海部の津波被害軽減研究の中心的な役割を担っている東北大学の今村先生、本市の防災対策検討委員会委員である東京大学の加藤先生、といった日本が誇る防災学の先生方がご登壇される、豪華なイベントですので、ぜひ、皆様、会場にお越しください!


平成30年度「津波防災の日」スペシャルイベント「最新科学×津波×地域防災」について

津波に関する最新科学の紹介に加え、全国の津波を想定した地区防災計画策定の取り組みを踏まえて、地域における津波の備えについて考えるイベントとなっています。

<日時>
11月5日(月)13:00~18:00
<場所>
川崎商工会議所川崎フロンティアビル2階KCCIホール
<プログラム>
14:00 開会挨拶 内閣府(防災担当)/川崎市
14:10 緊急報告「9月28日にインドネシアで発生した地震・津波について」
14:20 「地域における津波防災の取組みと地区防災計画の役割」
16:20 「川崎市の津波防災~企業・地域での最新科学活用に向けて~」
17:05 「地域・企業・学校におけるこれからの津波防災」パネルディスカッション
17:55 閉会挨拶 内閣府(防災担当)

また、同日13:00から18:00までの間、「津波防災教育ツールミニ体験会」も実施します。
本イベントは参加無料です。皆様のご参加をお待ちしています。
詳細は以下のリンクをご確認ください。
>平成30年度「津波防災の日」スペシャルイベント「最新科学×津波×地域防災」チラシ

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