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「防災とボランティアのつどいin愛媛」の開催に向けて

内閣府は、1月27日(日)に、愛媛県松山市のひめぎんホールにて、「防災とボランティアのつどいin愛媛」を開催します。
被災者支援などのボランティア活動に関わった人、現在防災に関わっている人、これから関わりたい人や関心・興味を持っている人が一堂に会し、これまでの歩みを振り返りながら、「これからの防災」と、「災害時の連携・協働の取組み」を考え、交流し、つながる機会となる予定です。
開催に先立ち、基調講演を担当される岡本正先生(銀座パートナーズ法律事務所・弁護士)および、当日のコーディネーターを務める木村謙児様(NPO法人えひめリソースセンター南予担当理事)、被災直後に現地での支援活動に尽力された高橋真里先生(香川大学地域強靭化研究センター)にインタビューを実施しました。
防災やボランティアに関心のある読者の皆様も奮って本つどいにご参加ください!
>「防災とボランティアのつどいin愛媛」の概要


<岡本正先生のプロフィール>

経歴:
弁護士(2003年登録)。博士(法学)。防災士。防災介助士。岡本先生

2016年に銀座パートナーズ法律事務所を設立しパートナーに就任
内閣府行政刷新会議事務局上席政策調査員(2009年10月~2011年10月)、文部科学省原子力損害賠償紛争解決センター総括主任調査官(2011年12月~2017年7月)など公職を歴任。政府や日弁連における災害復興支援経験をもとに『災害復興法学』を創設。

――防災に携わるようになったきっかけについて教えてください。

東日本大震災当時は内閣府に出向中で、行政・規制改革を担当していました。弁護士であると同時に、国の政策にかかわった経験を活かそうと、被災地等で実施された無料法律相談のデータベース化と、生活再建や復興に関する法改正などに関与するようになりました。相談データは震災から1年間で4万件を超えるものとなり、弁護士らの提言で多くの法改正や新規立法が実現してきました。
被災者を支援する法律があるにも関わらず、それらが知られていない、活用されていないことで、被災された方々がより苦しんでいることに気が付きました。また、既存の法律でも不十分なものが多く見つかりました。そこで、生活再建のための知恵や、制度を良くするための政策論を学ぶ「新たな防災教育」が必要であると考え、2012年に『災害復興法学』という分野を立ち上げました。

――基調講演の演題に「知識の備え」とありますが、被災者および支援者がそれぞれ知っておくべきことは何があるでしょうか。

「防災」と聞くと、「津波から避難する」、「地震から身を守る」、あるいは「耐震化を行う」といったことがイメージされます。命そのものを守るために、これらが重要であることは疑う余地がないのですが、大きな災害が起きると、目に見える被害だけでなく、被災地での「人々の生活」も、非常に困難な状況に陥ることになります。住まいや職場を失い今後どう暮らしていけばよいのかわからない、お金がなく住宅ローンなどの支払いができない、といった悩みの声がたくさん生じるわけです。こういった「被災のリアル」をまずは皆さんに知って欲しいと思います。
この国には、被災された方々を守るための「法律」や「制度」があります。代表的なものとして、「り災証明書」、「被災者生活再建支援金」、「災害弔慰金」、「自然災害債務整理ガイドライン」など、被災者の生活再建に役立つ法制度、仕組みがあるのです。ただし、これらを知っていて自ら手続きをしなければ、支援金は支払われませんし、住宅ローンの減免等について速やかな相談もできません。そのため、まずは「支援制度の存在を知っていること」が重要です。もちろん、お金だけでは被災された方々の悲しみを癒やすことはできませんが、絶望的な状況の中で、少しでも前に進むための、希望の第一歩となるのではないかと考えています。
災害が起きた後に、被災者がニュース等から支援情報を収集することは非常に困難です。そのため、誰もが被災者になり得る日本において、皆が「防災の知恵・常識」として、これらの制度を事前に知っておく必要があると考えています。

――被災者支援における専門家の方々のボランティア活動(プロボノ)の課題についてお聞かせください。

弁護士と災害の関わりについてお話させていただきます。前述の様々な支援制度は、原則として法律が根拠となっていますので、被災者の方々へ内容を説明し、どのような制度を利用するかを検討する際に、弁護士の経験やスキルを活かすことができるのです。通常大きな災害が起きた際は、日弁連や都道府県の弁護士会が無料法律相談や情報提供活動の窓口を設置しますので、まずはそのことを事前に知っておいていただきたいと思います。
また、弁護士だけではなく、行政の方々、様々な資格職の方々、福祉・看護・医療分野の方々なども、被災者と触れ合う機会が必ずあるわけですので、いわばオールジャパンの「官民連携」のサポートによって、相談窓口等に被災者の方々をきちんと誘導することが重要だと考えています。

――本イベントに向けて、一言お願いします。(期待・抱負など)

参加者全員に、新たな「気づき」を得ていただきたいと思います。生活再建に関する知恵を持った人が増えることは、行政、民間の組織を強くし、地域の強靱化(レジリエンス)にもつながると考えています。


<木村謙児様のプロフィール>

経歴:
NPO法人えひめリソースセンター南予担当理事木村様
八幡浜みなっと みなと交流館 館長
県内建設会社で35年勤務した後、2013年4月より現職。
社会活動歴として八幡浜市ボランティア協議会会長、愛媛県ボランティア連絡協議会会長を歴任し、地域福祉の分野で活動。

――NPO法人えひめリソースセンターの平時の活動内容について教えてください。

えひめリソースセンターは、非営利団体、行政、企業等、多様な立場との協働を通して、市民社会の発展に寄与することを目的とし、県域の中間支援組織として活動しています。平時は主に、ボランティア団体に対して、助成金等の資金面や、団体の広報活動について助言するなど、運営全般に関する支援を行っています。(南予地域で主に活動)

平成30年7月豪雨の際に、被災地に対してどのような支援活動をされたかについても教えてください。

平成30年7月豪雨の際は、愛媛県社会福祉協議会やJVOADさんなどと共に、「情報会議」の運営に携わりました。被災地では、発災直後、信憑性が定かではない様々な情報が飛び交います。また、狭い範囲の情報しか入ってこないという状況にも陥りがちです。そのため、当時は「正確かつ広域な情報」に対するニーズが生じており、情報をつなぐ活動を実施しました。また、全国各地から支援に来ていただく方々と、地域の方々とをマッチングする役割も担いました。
このように「情報」と「人」をつなぐことによって、産業や地域コミュニティが守られる様子を目の当たりにし、支援活動を行う意義を強く感じました。

――当時、被災地への支援を実施するうえで困ったことおよび、活動を通じて得られた知見について教えてください。

被災地への支援を行うにあたっては、「行政、NPO、ボランティア」の三者連携が非常に重要です。ただし、異なる立場の方々が集まりますので、認識にずれが生じてしまうなど、調整が難しい場合もありました。そのような際、「活動の目的・課題をきちんと共有する」、「腹を割って話す」という2つを心がけることで、誤解が解け、信頼関係が生まれ、上手く連携することができたと考えています。

――本イベントに向けて、一言お願いします。(期待・抱負など)

被災直後のことを今改めて振り返ることで、今回の災害によって得られた経験、ノウハウを定着させる場となれば良いと思います。また、参加することで得られるものは人それぞれ異なると思いますが、キーワードや具体的な方法など、何か一つでも持ち帰っていただき、それぞれの地域に還元していただきたいです。


<高橋真里先生のプロフィール>

経歴:
香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構 高橋先生
地域強靭化研究センター技術補佐員(2016年~)。香川県防災士会事務局長。防災士。

――高橋先生は、平成30年7月豪雨の発災直後に現地入りし、ボランティアセンターの運営支援活動をされたとお聞きしています。当時の活動内容について教えてください。

元々、愛媛県社会福祉協議会に知り合いがいたため、必要であればすぐに支援に行くということをその方に伝えていました。その後7月10日に、西予市における支援依頼があり、地元香川県社協からの協力依頼も受け、11日に西予市のボランティアセンターに入りました。
その日が外部ボランティアの受け入れ初日だったのですが、社協や災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P)の方が入られて、すでにある程度運営体制が確立された状態でした。また、西予市の社協の方々は本当に地域のことをよくご存じで、住民の方だけでなくペットのことも把握していたり、「この家から助けを求める連絡が来ているのであれば、あの家も同じ状況に違いない」といったことまで判断されていました。
当時、現地は非常に気温が高く、さらに停電、断水もあり、三重苦といった状況でしたが、このような素晴らしい方々の活動によって、西予市のボランティアセンターの運営が上手く回っていたという状況でした。
私自身はボランティアセンターのレイアウト・動線に関する助言等を実施していました。

――発災から半年以上が経ちますが、現在の被災地のニーズについて教えてください。

現在の被災地では、やはり「生活支援」が主なニーズとなっています。その中で、ごくわずかではありますが「土砂を取り除いて欲しい」という依頼もあります。そのような場合には、単発で動いてもらえるボランティアの方が必要で、西予市ではボランティアの事前登録制を行っており、ニーズが上がってきた際には登録していただいているボランティアさんにお声かけし、活動していただいている状況です。
また、ある程度時間が経つとどの災害でも同じで、被災地に関する報道がどんどん減っていきますが、災害を風化させないでもらいたいです。例えば愛媛県では、宇和島に関するニュースは今もよく目にしますが、同じく大きな被害のあった西予や大洲などに関するものはごくわずかになっています。旅行の際に少し立ち寄るだけでも良いし、ネット検索で今の被災地の状況について調べることからでもいいので、被災地のことを忘れないでいただければと思います。

――今回の「防災とボランティアのつどいイベントin愛媛」は、被災者支援に関わった人のみならず、これから防災に関わりたい人も対象としています。様々な方がボランティアに参加し、その力を最大限発揮していくためには何が必要とお考えでしょうか。

ありきたりですが、「横の連携」が重要です。何かあった時に「助けてください」と言える関係を日頃から、多くの方々と作っておく必要があります。被災地の方々はどうしても我慢をしてしまいがちなので、「優しいおせっかい」をしてくれる人が増えると良いですね。
また、被災地でのボランティア活動は、やはり地元の方が主体となって行う必要があります。そのためにも、災害が起きても、自らは支援者側に回れるよう、被災者にならない、万一被災してもすぐに立ち直れるような備えを皆さんにしていただくことも重要です。

――本イベントへの期待を一言お願いします。

私も参加させていただきますが、イベントで見たこと・感じたことを、自分の周りの5人に伝えて欲しいと思います。“ボランティアインフルエンサー“のような形で、正しい情報を楽しい仲間と共有できるような防災の輪を広げていただきたいですね。