特集
「第33回防災ポスターコンクール」審査員インタビュー(後編)
内閣府では、平成30年1月21日(日)に第33回防災ポスターコンクールの表彰式を実施しました。表彰式に先だって平成29年12月に行った審査委員会にて、審査員を代表して為末大さんにインタビューをしました。後編では、子供たちの防災への関わり方などをお聞きしました。
(前編は「「第33回防災ポスターコンクール」審査員インタビュー(前編)」をご覧ください。)
為末大さんプロフィール
1978年広島県生まれ。
スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。3度のオリンピックに出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2018年1月現在)。
現在では、スポーツを通じた様々な社会貢献活動を行っている。
防災ポスターコンクールの実施要領や審査結果は、こちらをご確認ください。
――子どもたちは、今後どのように防災に関わって欲しでしょうか。
子供たちには絵を描いている時や、ポスター見ることで、頭のどこかにあるだけでも全然違うと思うので、あまり身構えずに日頃の自分達が家でやれる事とか、ちょっとだけ想像を働かせるという事をして欲しいと思います。もうひとつは、例えばアスリートでスランプの心理研究をすると、周辺の人間関係が良好であると立ち直りが早いという研究結果があります。防災で追及をしていくと、自分の人生のセーフティーネットみたいな側面が強いのではないかと思っていて、制度的にはまる場所や周辺の人との関係性を構築していく事で共助ができてきます。共助は、地域の為に何か自分がやらなきゃと思っていながら何かあった時、自分の追及になってしまう。皆、誰が、いつ、どうなるか分からない。災害の場合は全員に来ますけど、個人に来る様々な出来事もあると思うので、そのような捉え方でいくと、周辺の人との緩やかな人間関係を構築することができると、何かあった時に助け合えることができると思います。そのような事は、これから先すごく重要だと思います。大人は子供たちに「知らない人について行っちゃダメだよ」と言っているので加減は難しいですが、本当は地域で色んな繫がりを持っていくうえで、子供たちも色んな人と喋る機会を持ったり、友達と「こうゆう事起きたらどうなるんだろうね」みたいな話してみたりといった、想像力を働かせてみて欲しいと思います。
――子供たちがポスターを描いたことによって、家族やお友達などのネットワークが広がるかと思いますが、どのように防災を考えていってもらえば良いでしょうか。
するスポーツは、ローカルでないと成り立たないんです。ここからサッカーのセリエAは見ることはできるので、見るスポーツの方はグローバルにいけるんですが、イタリアの子供達とサッカークラブを一緒にやる事は出来ない。なぜなら週に一回は練習をしなくてはいけないので、通える範囲になります。そのような意味ですとスポーツクラブは、既にコミュニティーがあります。防災を中心としたコミュニティーを構築するというよりも、あるコミュニティーの中に防災的な観点を差し込んでいくというのをやるとよいと思います。そのような観点で、防災の切り口でいく時に届けられる範囲と、既にあるアーティストの世界に入っているのが今回のコンクールだと思いますが、同じ様にスポーツのイベントの所に防災を絡めると、既に違う理由で集まっている人達に向けて、防災意識を高めていくことができます。そのような広がりが結構できると思います。
また、例えばスポーツでは、アンチドーピングがありますが、薬局で薬を飲む前に我々は必ずアンチドーピングのところにアクセスして、この薬飲んで良いのですかというのをやるホットラインがあります。とにかく薬を買う前、ここに連絡して、OKを貰った物しか飲まないということにより、意図せず飲んだ物でひっかかるドーピングが相当軽減されました。その中で、完全にリテラシーを高めていく教育の方法と、とにかく何かあったら、ここにこうするという、とにかくシンプルなメッセージングにするような2つを使い分けても良いのと思います。
――防災ポスターコンクールで選ばれた作品や、選ばなかったものでも、凄く気になったもので面白いなと思ったものについて、感想を改めてお聞かせ願えればと思います。
東北の被災地の状況を描いている子がいて、もしかして避難経験のある子かテレビの影響かもしれませんが、見た状況を描けているということは記憶にすごく残りやすいと思います。また、スマホを題材にしている子が数人いましたので、そのような時代にもなってきているということだと思います。彼らの時代になると、自助・共助もデジタルで捉えているということだと思います。
――子供たちに触れ合う機会も多いと思いますが、防災の面で子供達に期待することはどういったことでしょうか。
例えば食育の側面では、日本の子供のリテラシーは凄く高いと思っています。おそらく、防災に関してもリテラシーは高い思います。今後も考えていくうえで、協調して動くということは、日本人が得意とすることだと思いますが、それが更に話し合われて、想像を働かせながら、どのように協調して動くのかが必要となります。別の事を話している時などに、もしここで地震が起きたらどうするのかなどを話しておくことは大事だと思います。少し大きな観点でいくと、日本の子供たちは、今の世代は留学する事が多いと思いますが、おそらく世界的に日本ほど防災に関して意識が高い国は無いと思うので、それを世界に普及する役割も担うべきではないかと思います。
――防災ポスターコンクールは、今後も続けていくべきだと思いますか?
先ほどの理由と一緒で防災について考えようとした途端に、引いてしまう子がたくさんいると思いますが、防災ポスターコンクールは、絵のコンクールという事で応募した子供たちも多いと思います。入口は別の興味ですが、入っていくうちに知識が広がるという側面と、目にする機会を増やす為にも、このようなポスターだと沢山の人たちが見る事が出来ると思うので、意義のある取組だと思います。
――まだまだ防災ポスターコンクールを知らない人も多いかと思いますが、今後どうやっていったら普及していくかなどの、アイディアはありますか。
デジタル領域のデザイナーの人たちは多くいると思いますが、彼らは自分が表現する事で人の意識を変えるっていうことが根本的なデザイナーの興味だと思います。そのような人たちの表現の場所は、あっても良いと思います。デジタル領域でコンテストのようなこともやって、誰が一番、防災に対して発信できそうか、ビジネスアイディアのようなことをやってみると結構面白いと思いました。今、子供たちの夢を聞くという授業をやっていますが、ひとクラス30人のうち、1人か2人はゲームのクリエーターかデザイナーになりたいという子がいます。そのような子供たちがデジタルの領域で防災に関して、何か作ってほしいといったらやるのではないかと思っています。
――ご自身で日頃、防災について気を付けていらっしゃる事、何か備蓄されている事とか何か心がけしている事とかありますか?
家内が心配性なので、このまま一年ぐらい生きることができるのではないかと思うぐらいの飲み物とレトルトがあります。あと、家族で近所の神社を集合場所と決めていました。